ピラルク養殖の開始


長い間の実験研究を経て、我々グループにも多くの協力者・賛同者が現われ、いよいよ本格的なピラルク養殖への扉が開かれ始めた。
この扉を開くには、二つの大きな障害があった。
一つは経済的な問題であり、もう一つは世界的に特別保護されているこの魚種のサンパウロでの養殖許可問題であった。
経済的問題については、サンパウロ市内にて大手のベビー用品(衣類)の卸業の経営者であり、アガリクスの栽培・販売として日本でも知られている、内藤氏の全面的な協力にて、何も心配することなく見事にクリアーできた。
もう一つの許可問題については、少々複雑であったが、ブラジル農務省内、サンパウロ州立水産試験所(INSTITUTO DE PESCA)が、この養殖に興味を示し、彼らと共同で実験して行くと言う事で、すべての手続き・交渉に協力、彼らの手により許可を手に入れる事ができた。この問題は、大きく三つの分野にまたがった。
第一は、この魚種自身のもつ問題で、従来原産地であるアマゾン及び支流域にしか生息しないものをそれ以外の地で養殖を始める事により、外来種的繁殖をして、自然の生態系の破壊に繋がるのではないかという問題である。
この件については、ピラルクの持つ特性なども含め、前述のように1950年代に他の湖沼への移植を試みたが、ことごとく失敗に終わっている例や、自然環境下においては、まず絶対にサンパウロの冬場は乗り越えられない等の説明にて理解していただいた。
第二の問題は、水産養殖全体の問題とも言える、養殖する事により周囲の環境汚染を引き起こさないか?と言う事であった。
この点について、やはり前述しているが、我々の目指すこの企画での養殖は、自然環境を破壊・汚染するどころか、少量の排水・ロ材の利用などにより、現在すでに破壊・汚染されてしまっている環境をも改良・改善して行き、本来の豊かな生態系を取り戻そうと言う企画であり、我々の実験中にサンパウロの竹グループの協力も得、地質・水質改善について、マットグロッソ州、サンタカタリーナ州等の大学農学部内の学生・研究者達の賛同にて、本格的研究の用意もなされる事となり解決できた。
最後の第三の問題は、さらに広視野に立ち本当にこの養殖が多くの人々のためになり、自然浄化のためになるかと言うものであった。
これらすべての点を十分に吟味するためにも長い時間がかかったが、一応ここで一般の人々が養殖をする事を前提に、上記のすべての疑問を現実に解決して行き証明して行くため、すべてのデータを取りながら実験して行くと言う事で、すべての許可を得る事ができた。これに対し再度、この企画に協力・賛同してくださった、内藤氏、各試験所、研究室及び竹グループの方々に感謝いたします。

では、現実的にこの養殖開始とともに、養殖池内の水質変化、ピラルクの成長記録、投餌等、すべてのデータの記録を発表させてもらいながら、皆様とともに歩んで行こうと思います。もし皆様の方からのお気づかれた点等ありましたら、メール交換などできましたら幸いと思います。

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