[最後の贈り物:]

最後の贈り物

やっぱり会うべきではなかった
いつも、絡ましてくる腕は、歩くリズムに合わせて彼女の身体の横で揺れていた。
お互いに離れてしまった気持ちは、どんなにがんばっても引き寄せることできなかった。
引き寄せようとすればするほど離れていった。
二人で過ごした、溶け合うような熱い時間はもう遠い昔なのだ。
お互いの冷え切った気持ちは漂着した流氷のようにゴツゴツとぶつかりあう。相手を傷つけないようにするのがやっとだった。
「Boa Sorte(幸運を)」
別れ際に心の中で祈ることが僕にできる彼女への最後の贈り物であった。

[index]