[柱の傷:]
柱の傷
息子は僕の身長を越えてから、柱に傷をつけてくれと言わなくなった。 それまでは、傷をつけてくれと煩いほどに頼んできたのに。 3年前に僕が背伸びして傷をつけた地点から止まったままである。 手をつないで歩いている親子を見て、幼い息子の手を引いて歩いたことを思い出した。 つい最近のことのようであるが、もう、あれは遠い昔の出来事なのだ。 すっかり大人になってしまった息子を見ていると、幼いころの息子との日々が幻のようである。