[クリスマスの夕方:]

クリスマスの夕方

セントロは物売りと乞食で溢れていた。
「セニョール、10センターボ(4円)恵んでおくれよ」
薄暗くなった街角で、ひげ面の老人がひょいと空き缶を差し出してきた。
そのタイミングと僕の気持ちがピタリと合い、
まさぐったポケットにあった25センターボ硬貨を空き缶の中に入れた。
カランという音とともに老人の野太い声が夕方の、人通りの少なくなった通りに響く。
「良いクリスマスを。この方に、神のご加護を・・・・」彼の言葉はいつまでも続く。
その哀しげな声は、すくなくとも彼よりは恵まれたクリスマスを過ごす僕を責めているようで、
逃げるようにその場を立ち去った。

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